袴田事件「特別抗告」止めた甲斐検事総長

証拠の捏造、異常な捜査。これほど刑事司法の課題を突き付けた事件はない。

2023年5月号 DEEP

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1966年に一家4人が殺された事件で起訴され、死刑確定後も無実を訴えてきた袴田巌さん(87)の再審開始が3月13日の東京高裁決定で確定した。再審公判での無罪は確実と見られる。検察側は最高裁へ特別抗告することもできたが、甲斐行夫検事総長の決断で見送ったと言われている。決断に至る事情と冤罪を雪ぐのに60年近くを要した理由を考察する。同高裁決定などによると、袴田さんは66年6月30日未明、静岡県清水市(現静岡市清水区)の、みそ製造会社専務宅で41歳と38歳の専務夫婦と17歳次女、14歳長男を次々にくり小刀(刃渡り12センチ)で刺し、4人を殺害した上、混合油をかけて火を付け、専務宅を全焼させ、現金などを奪ったとして同年8月18日に逮捕され、強盗殺人や放火などの罪で同年9月9日に起訴された。袴田さんはフェザー級国内6位の元プロボクサーで、65年から同社工場で働き、工場2階の従業員寮 ………

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