難破した日銀 荒海泳ぐ植田総裁/参議院議員・大塚耕平

「2年で目的地に到着する」と根拠なく強弁して乗客(国民及び経済)を未踏の海域へ導いた船長(黒田日銀)の責任は免れない。植田日銀は未踏の海域をどう航海するのか。

2023年4月号 BUSINESS [三耕探求⑪]

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植田和男氏はデフレ傾向が深化しつつあった1998年4月から2005年4月まで7年間、日銀審議委員を務めた。2000年末まで日銀に在職した筆者としては、能力、経歴、人柄等の観点から総裁候補として適格だと思う。しかし、植田氏が成果を挙げられるかは定かでない。黒田日銀が残した「負の遺産」はそれほど深刻だ。

壮大な社会実験の顚末

デフレの原因について、金融現象、実体経済、心理面等々の論争があったが、異次元緩和の背景には「デフレは金融現象であり、金融緩和で解決できる」との論理が通底していた。黒田日銀の壮大な社会実験は「デフレは金融現象ではない」あるいは「金融緩和だけでは解決しない」ことを明らかにした。結果を得るために払った代償は大きい。黒田日銀の10年間(グラフⅠ)に、日本の経済や社会で進んだ構造変化を確認しておく。第1に、コスト偏重思考の海外進出の結果、国内生産の輸出品が減少し、貿易 ………

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