連載 病める世相の心療内科

仏陀が用意した「二河白道」の救い

2022年12月号 LIFE [病める世相の心療内科(71)]

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69歳の元大学教授は40歳の娘をカッターナイフで切りつけた。もともと難病を抱え寝たきりの母と、早々に認知症が始まった父のために娘は実家にもどってきていた。父親は現役のころは情報関連の気鋭の学者であったが、60を過ぎて言動が妙に激しく攻撃的となり、結局認知症の始まりを指摘され一線を退いた。そのうち、某銀行のシステムは自分が作り出したもので、その対価を要求しにゆくと言い張りだした。荒唐無稽な内容で娘が止めたところ激怒したというのであった。介護者がくたびれ果て被介護者を殺すケースは日々起きている。老夫婦の諍う声が近隣に聞こえることも珍しくなく、家で包丁を振り回す年寄りについての相談も少なくない。娘はその時父親に死神が取りついたように見えたという。仏陀は言う、災いは内から生ずる。ただ、仏陀のいう内とは家庭にとどまるのではなく、人類全体をさしていると思 ………

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