連載 病める世相の心療内科

精神病院での「語られざる出来事」

2022年10月号 LIFE [病める世相の心療内科(69)]

  • はてなブックマークに追加

駆け出しの医師であった昭和49年頃、精神病院の勤務医だった。当時は入院中の精神病者の8割方を狭い病棟に隔離するのが主流であったが、その病院は、閉鎖的処遇の非人道性の観点から精神病院の開放化運動を進めていて、一気に8割の入院病棟のカギを外し、24時間出入り自由とした。それは素晴らしい改革であったが、その後、長く様々な問題が起こり続けた。例えば、落ち着かない入院患者を開放病棟で管理するために、大量の向精神薬が投与され、心臓毒性による突然死が少なくなかった。その非人道性を指摘する者はなく、当時の開放化病院で成果を競い合う推進派の医師たちは、賑々しく書物や論文をしたため、世に発表していた。この精神病院の開放化はその後、修正は加えられたが、大きく後退することはなかった。ただ、刑法犯罪を犯した精神病者については欧米に倣って医療観察法病棟が導入された。かつ ………

ログイン

オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。

FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。