連載 病める世相の心療内科

石垣の隙間から生え出た朝顔

2022年1月号 LIFE [病める世相の心療内科(60)]

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狭い庭にしきりと、園芸草花を植えている。園芸種は鮮やかな大振りの花をつけるがややひよわである。代を重ねると原種に近くなり花も小さく色も地味になるが逞しさを増す。前の年に咲いた花から、道の側溝や石組みの隙間にこぼれた種から生え出て、何とか垣根にしがみつきながら咲く朝顔は地味な色合いだが逞しい。前年の種が、たくさん庭に落ちたはずだが、別の花の植え付けのために庭を耕し、むしろ、恵まれた位置に落ちた種は排除されてしまう。日当たりの悪い、養分の乏しい環境で何とか発芽し人知れず放置されることで、花を咲かせ、子孫を残せるまでに至った朝顔を見ると、草の種にも運命を感じさせる。 以前、情緒不安定で通院していた女性が、一緒に暮らしている男と、再びやって来た。少し気分を落ち着かせる薬が欲しいという。通院時、彼女は風俗で働き、老いた母親と父親の違う12も年上の兄 ………

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