連載 病める世相の心療内科

人間にフェイク情報は見抜けない

2021年6月号 LIFE [病める世相の心療内科(53)]

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少しうつ気味で80過ぎの視覚障害の女性患者は、自分の家に帰りたい、私を故郷に戻すよう息子に言ってくれと訴える。故郷の家にはこの5月みかんの花が咲いて上品な香りが漂っているはずで、その香りをかげばもう思い残すことはないという。息子は素敵な高級マンションの11階に、父に死なれ独り身となった母を迎えた。視覚障害でも不自由なく暮らせるシステムが備わり、火事や泥棒の心配もいらない。しかし、ここにいると季節も昼夜も分からなくなる。田舎のあばら家では、花の匂いで季節が分かり、声の調子で訪れる人の気持ちを知ることもできる。先ごろ泥棒に入られたことで息子の家に移った。ただ、泥棒が入ってきたとき彼女は家にいて、臭いで近所の中学生だと分かったという。その少年は彼女が視覚障害者であることを知っていた。ある時、彼女が玄関でつまずき、転んだとき、その少年が助けてくれた ………

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