監視社会がもたらす動物的恐怖
2021年5月号 LIFE [病める世相の心療内科(52)]
外に出ると、誰かがずっと自分を見張っている。至るところに監視カメラがついているようだ。通りを歩けば誰かがつけてくる。すれ違う人も意味ありげな目をして通り過ぎてゆく。きっと自分のことは町中に知られているのに違いない。そのためおちおち外に出られない。辺りが暗くなり、人が疎らな深夜、そっとコンビニに行くぐらいだ。そういう引きこもりの青年を、心配した家族が連れてくる。見張られている、監視されている、という訴えはある種の精神病者に普遍的で、診断の決め手にもなる。とはいえ、これが、極めてありふれた病態であることを不思議に思う方もいるのではないか。病者はなぜ共通してこのような思いに囚われるのだろうか、と。君は後ろ指をさされるようなことはしていない。悪いことをしていないのだから堂々と外を歩けば良いのだよ、と諭したところで青年の不安が払拭されることはない ………
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