連載 病める世相の心療内科

令和の「閉鎖病棟」に生きる9歳少女

2021年4月号 LIFE [病める世相の心療内科(51)]

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前項で述べた昭和48年ごろの精神科閉鎖病棟は、刑務所よりストレスフルな空間だった。閉鎖病棟に暦や時計が用意されていることはほとんどなかった。治療者たちが病者を退院させようという意識に乏しかったせいであるが、病棟には時間が流れていなかった。いつ解放されるか予測できない病者たちは、刑期の定まっている受刑者以上に緊張を強いられ、強い不安と絶望を抱えざるを得なかった。それを抑え込むため、病者はまるでロボットか案山子のような形式的な硬直したしぐさをするようになり、自由な動きを自ら停めてしまう。絶望と緊張に満ちた閉鎖病棟では、些細な刺激でも封印が外れるように激しい行動が喚起されやすい。前回述べたように、おとなしい統合失調症の青年(F君)が、ほとんど無抵抗の知的障害の患者に突然暴力をふるうことがあるのである。F青年は統合失調症だから暴力をふるったわけでは ………

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