病める世相の心療内科㊿

精神科閉鎖病棟の「生ける屍」

2021年3月号 LIFE [病める世相の心療内科㊿]

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チェーホフという革命前のロシアの作家に「6号室」という中編の物語がある。当時の暗い逃げ場のないロシアの雰囲気を精神病棟に置き換えた傑作で、レーニンも絶賛した。それで革命を決意したかどうかは私の知るところではないが、駆け出しの医者のころ、私もその物語を読んで、鍵のかかる精神科閉鎖病棟に体験入院を試みた。昭和48年の暮れのころである。 当時の閉鎖病棟は、患者1人当たりの占有面積が現在の3分の1程度しかなく、ほとんどが大部屋で、今では病棟に設置義務のある、外部と連絡を取れる電話機もなかった。病棟を管理しているのは医師ではなく、男子病棟などは海軍衛生兵上がりの屈強な男性看護師であったりもした。要するに、簡単に逃げ出せるようなところではなく、そこに病者たちは時に5年10年さらに20年と入院させられていたのである。私も12畳ぐらいの畳部屋に12人も寝ている病室に ………

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