『007』と『血と骨』を混ぜ合わせたような生き様だった「マカオのカジノ王」が亡くなった。カジノ誘致に血眼の日本を残して。
2020年7月号 GLOBAL
マカオのカジノ王、スタンレー・ホーが5月26日、この世を去った。98歳。本誌は2017年2月号でカジノ企業オーナーの「裏実録」を明かしたが、彼の生きざまはその中でも戦争の暗闇のなかで特別な光彩を放つ凄まじいものだった。日本との深い縁もあった。4人の妻、17人の子供という性豪ぶりもさることながら、何度もマフィアに命を狙われつつ、40年にわたってマカオのカジノ権益を握り続けた。世界のカジノ界にも血のつながった子たちを通じて影響を及ぼし続けた。その意味では業界トップ「ラスベガス・サンズ」CEO兼会長のシェルドン・アデルソンですら及ばぬ、「世界一のカジノ王」だった。人生はまるで、スパイ映画『007』と、北野武の映画『血と骨』を混ぜ合わせたような濃厚さだった。1921年、裕福な家庭に13人兄弟の9番目として誕生した。しかし、13歳の時、父親が事業で失敗し蒸発。一家は貧困の底へ ………
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