生きにくい日本の「現実世界」
2019年7月号 LIFE [病める世相の心療内科㉚]
他に方法はなかったのか? 農林水産省の元事務次官が息子を殺害したニュースを聞いて、ひきこもった子を持つ親たちの少なからずが不吉な予感に駆られただろう。高齢の親が引きこもっている子を殺す事件はこれまでにも時々新聞の片隅に出ているものの、あまり注目されることはなかった。しかし、今回の事件はそれと同じような構造をとり、法律運用の専門家の最高位についた者でさえ、息子を殺すより他に方法を見いだせなかったという点に注目すべきかもしれない。既にさまざまな角度から論評がなされているが、この事件は日本社会が抱える構造的な問題を示唆しているように思える。殺された息子はすでに中学2年のころに母親を殴ったとネットに載せている。44歳に至るまできちんと就労していなかったようである。ネットの投稿を見る限りはっきりした精神病的なものは認めにくいが、社会性を持たずネット ………
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