2019年4月号 LIFE [病める世相の心療内科㉗]
そろそろ終わろうとしている平成の世は、天災には襲われたが戦乱はなくかなり豊かな時代であった。しかし今、私のクリニックには不安を訴える人が多数やってくる。精神の病はどのような病であれ不安を内在しているが、狭義の精神障害から外れる人々が訴える症状の中核にも不安があることは疑う余地がない。不安が増大している理由の一つは、コミュニティが喪失し、人と人との関係が希薄化したからと考えている。ある自治体の自殺対策委員をしている私は、自殺対策のさまざまな政策の一つに「コミュニティの充実」を挙げさせてもらった。自殺は人と人とのリアルな関係の希薄化の中でよく起きるからである。今や人々は関係を持つことに警戒的になり、核家族や離散的な生活を基本とし、他者から干渉されにくい孤立した生活を「安心で自由」と思い込んでいる。マンションなどの集合住宅のみならず住宅街にお ………
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