美の来歴⑧ ゴッホと「日本」という物語

バブルに咲いた『医師ガシェの肖像』の流転

2018年11月号 LIFE [美の来歴]

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ヴィンセント・ヴァン・ゴッホが死の1カ月前に描いた『医師ガシェの肖像』は、パリ近郊の小村、オーベル・シュル・オワーズで治療の傍ら、家族ぐるみの親交を結んだ精神科医、ポール・ガシェがモデルである。「いま、ガシェの肖像を描いている。白い鳥打帽をかぶり、純然たる金髪で、とても明るく、手の色も淡い肉色で、青い礼服を着け、背景は青い空色で赤い机にもたれている」。弟のテオに宛てた手紙に画家はそう書く。セザンヌやピサロとも懇意な美術愛好家のガシェは、ゴッホとテオの没後に残されたこの肖像画など、20点ほどの作品をオーベルの自宅に置き、息子がそれを引き継いで守り続けた。ゴッホが無名のまま没してからおよそ30年後、日本から若い画家や作家や詩人、学者などが、不遇のうちに世を去った天才画家の足跡と作品を求めて続々とこのガシェの家を訪れ、空前の「オーベル詣で」のブー ………

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