病める世相の心療内科⑳『めぞん一刻』の幸せな瞬間

2018年9月号 LIFE

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漫画家・高橋留美子のデビュー作『めぞん一刻』は、傑作である。ぼろアパートに管理人としてやってきた若い未亡人・響子と住人の浪人生・五代の恋愛物語だが、一見ドタバタ劇のようで、登場人物のキャラクターの多彩さや心の動きがよく描かれ、最近のファンタジー物語のような、現実にあり得ないような設定がない。その中に印象的な場面がある。響子とちょっとしたいさかいを起こした五代は、たまたまアパートに設置されたピンク電話から管理人室に電話し、誤解を解こうとする。ピンク電話は管理人室の前にあるのだから、壁一つ向こうの彼女に電話していることになる。ただ、物理的距離はこの際、関係ない。いさかいによって広がった心理的な距離を電話によって乗り越えた。その飛躍が、魔法のホーキにのったかのような美しいジャンプに、私には感じられたのである。『めぞん一刻』は、主人公のみならず ………

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