美の来歴⑥トクヴィルのまなざし

シャセリオーの肖像画が予感した「トランプの米国」

2018年7月号 LIFE

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テオドール・シャセリオーが19世紀半ばに描いた『アレクシ・ド・トクヴィル』の前に立つ。観る者はおそらくそのモデルの典雅なたたずまいの由来に想像をめぐらし、微かな憂いをたたえた眼差しが何を見ようとしているのか、という謎に引き込まれるに違いない。転換期(クライシス)を生きた時代の選良の揺らぐ心に分け入るような画家の造形はおそらく、深い友情を結んだ像主に対する共感と敬意(リスペクト)に裏打ちされている。当時45歳のこの人物の佇まいは、滅びゆく貴種の洗練と憂いをひっそりと伝える。歴史が激しく移ろう時代の騒めきを凝視する人間の醒めた霊気(オーラ)が、そこに漂うかのようである。*11世紀のノルマンディー公ウィリアムのイングランド征服までさかのぼる家系。広大な領地と城館を引き継いだトクヴィルの父は、革命で国王ルイ16世の処刑に伴い反革命派として収監され、テル ………

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