東芝のWH買収が原子力立国計画に弾みをつけ、経産省のお墨付きを得た東電が老朽原発の維持に舵を切り、あの大事故を起こした。
2017年7月号 BUSINESS [墓穴を掘った経産官僚]
振り返ってみると、2006年は日本のエネルギー政策の失敗の年と記憶されよう。誇り高き経済産業省・資源エネルギー庁の高級官僚たちは知るよしもなかったが、彼らにはこの年、「敗北」が約束されていた。東芝の西田厚聰社長は06年2月、英国ロンドンで晴れがましい調印式に臨んだ。英核燃料会社(BNFL)から米原発メーカーのウェスチングハウス(WH)を54億ドル(約6200億円)で買収する契約を調印するため、訪英したのである。このときの記者会見で西田は、「買収価格が高すぎるのではないか」という指摘を、「将来の原子力事業の成長性を考えれば妥当」と一蹴、鼻息はすこぶる荒かった。すべてはこれが始まりだった。調印式には原子力担当の執行役専務の庭野征夫も同席した。驕る西田に対して庭野の心境はさぞ複雑だっただろう。東芝の中でWH売却の動きを最も早くキャッチしたのは庭野だった。まだ岡村 ………
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