海底の戦艦武蔵が問う「戦後70年」

2015年4月号 連載 [いまここにある毒]

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無残なるかな。難破船を描いた名画は数多いが、フィリピン沖シブヤン海に眠る戦艦「武蔵」の映像には、心穏やかでいられない。マイクロソフト共同創業者の富豪が私財を投じた8年余りの探索の結果、3月1日、水深1千メートルの海底で無人の潜水艇が発見した。艦首の菊の紋章跡、15トンの碇とともに、89式高角砲や主砲の砲塔が映っていた。自身も俘虜になった大岡昇平『レイテ戦記』を思いだす。第9章「海戦」には、聯合艦隊が一艦隊を囮にしたレイテ湾突入作戦の失敗と、魚雷20本と爆弾17発を受けて沈む「不沈艦」武蔵の最期が書かれていた。一読、憤ろしくなる。敵編隊の空襲に自慢の主砲も三式弾(焼夷弾)で応戦したが、爆風が強すぎて甲板上の高角砲射手たちを吹き飛ばし、「空から降ってくる人間の四肢、壁に張りついた肉片、階段から滝のように流れ落ちる血」の事態となった。時代錯誤の大艦巨砲の ………

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