実録・ソニー「追い出し部屋」(最終回)我が道をゆけ「理想工場」のDNA

井深、盛田が描いた「家族主義」「レイオフはしない」という理想工場の夢は崩れ去ったが、タンポポのように散っていったエンジニアたちの心の中にDNAは残った。

2015年3月号 BUSINESS [短期連載・最終回]

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ソニーを辞めて、品田哲(あきら)はゆっくりと食事を楽しむようになった。その日の昼食に妻の邦子が作ったのはふんわりとしたオムライスである。二人きりのテーブルについた彼はスプーンを握ったまま、眼鏡越しに邦子をにらんだ。「これ、何だよ」ごはんを覆うとろりとした卵の上に、ケチャップで太く字が書いてある。「プー」と読めた。「プー太郎か」。3​6​0日の失業保険をもらい始めた2​0​1​3年の春だった。「プーだってそこそこ忙しいんすよ」。彼よりも先に早期退職して失業保険を受給する仲間がこぼしていた。それを邦子は覚えていて、からかったのだ。

毎月2回ハローワークの行列に並ぶ

部長や課長職だったソニーのエンジニア仲間はこの数年、次々に辞めていた。すぐに転職を決めた品田の元同期社員もいる。妻にこう言われたからだ。「ソニーを辞めるのはいいけど、家にずっといられるのはいやだからね」だが、リストラの時代 ………

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