『黒幕――巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』
2015年1月号 連載 [BOOK Review]
バブルの時代と、それ以降を区切るもっともわかりやすい変化は、「清濁併せ呑む」という言葉が人間の器量を示す肯定的な表現ではなくなったことである。『黒幕』の主人公、故石原俊介は、ソ連留学までした若き革命家時代、そして謎の空白期間を経て、1970年代に裏社会にも接点をもつ「情報誌編集長」に転じた。バブルの増殖期から、続く崩壊の過程、具体的には1980年代の後半から1990年代の前半、石原の発行する「現代産業情報」の発信するニュースは、テーマの選定、見立て、そして切っ先鋭い批判――どれをとっても冴えわたっていた。発行部数わずか数百部の情報誌編集長は「兜町の石原」と呼ばれ、カリスマ的な存在感を企業社会とマスメディアに示した。石原=現代産業情報の実力を、メディア関係者に知らしめたのは、1986年に表面化した平和相互銀行事件である。経営陣の内紛、そして特別 ………
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