曜変天目茶碗「天王寺屋」騒動

堺の豪商一族に伝わった奇跡の茶碗。500年の時を経て世に出る前に、75歳の資産家を手玉に取るブローカーの餌食。

2013年6月号 DEEP [妖しき虹色の「災厄」]

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茶碗の内側に強い光を当てると、それまでぼんやりしていた大小の斑点が、にわかに七色の虹の輝きとなって眼を射る。万華鏡のような変化は、入窯の際の温度差で生まれるが、「窯変」は美しい輝きを意味する「曜(耀)」の字が当てられて「曜変」となり、中国の天目山に由来することから「曜変天目茶碗」と呼ばれるようになった。現存が確認されている4点はいずれも日本にあり、うち3点は国宝、1点が重要文化財に指定されている。そのうち静嘉堂文庫美術館所蔵の「稲葉天目」は、徳川将軍家から淀藩主稲葉家を経て、三井の小野哲郎、三菱の岩崎小弥太に渡ったもの。小野が大正7年に求めた時の価格が16万8千円。当時の1円は現在の1万円。時価16億8千万円となる。4点は、いずれも中国福建省建陽市にあった建窯で、12~13世紀の南宋時代に製作されたといわれている。同時期、同じ福建省の茶洋窯で制作された ………

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