著者はこれまで、韓国が金日成暗殺を目的に結成した「実尾島（シルミド）部隊」や、在日韓国人の大物暴力団組長にして戦後日韓の裏ロビー活動に暗躍した町井久之の半生を描いたノンフィクション作品を発表してきた。東京新聞ソウル特派員の経験を生かし、長年朝鮮半島問題に取り組んできた。知られざる戦中、戦後の史実発掘には、定評がある。今度の著作は題名にある通り、1959年に始まった在日朝鮮人の北朝鮮帰還事業を阻止すべく、韓国によって日本に送り込まれた秘密工作隊66人の物語だ。著者は歴史の闇に埋もれてきた工作隊の実像を掘り起こすべく、50年以上歳月が流れた2011年夏から取材を始めたという。日韓の政府資料をはじめ、過去の新聞報道や文献を丹念に拾い、66人の工作隊の中から生き残っていた9人にたどり着く。本編では、その一人一人を訪ね歩いて真相を解明していく。その取材現場が目 ………