『ブータン 「幸福な国」の不都合な真実』
2013年1月号 連載 [BOOK Review]
「国民の97%が幸福」あまりに過剰な統計を疑うのは、メディアの役割だ。だが、2011年の秋、ブータン国王が来日した際、日本のメディアはこぞってブータンを幸せな国の象徴としてもてはやした。この極端な幸福が生まれた背景には、ブータンの暗い歴史がある。著者の根本かおるは、その歴史にブータン難民支援という形で関わってきた元UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の職員だ。根本が目を向けたのは、ブータンという国家の成り立ちだ。ヒマラヤの麓にある国は、常にインド・ネパールのヒンドゥ教文化に浸食される恐怖と隣り合わせだった。実際に小国シッキム王国は、インド・ネパール系の移民が国民の7割を占めるようになり、最終的にはインドに併合されて国家が滅亡した。ブータンはこうした事態を恐れ、チベット仏教系の文化を持つ3民族を国家の中心に据え、19世紀後半から入ってきたヒンドゥ教文 ………
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