2012年7月号 連載 [いまここにある毒]
市川亀治郎改メ四代目市川猿之助の襲名披露公演が始まった。本名、喜熨斗(きのし)孝彦。この三十代半ばの歌舞伎役者が、市川宗家の“不良”御曹司を名実ともに圧倒しようとしている。伯父、三代目猿之助(猿翁)の四十八撰を貪欲にレパートリーに取り込んだ舞台のひとつが、福岡の博多座で演じた「金幣猿島郡」(きんのざいさるしまだいり)である。くやしいかな、まだ劇場で観たことがない。四世鶴屋南北の絶筆で、三代目猿之助が1964年に復活させた。恋に盲目となった清姫の蛇霊と、平将門の妹に弄ばれた藤原忠文の怨霊が、ゴレンジャーみたいに合体し、両性具有の鬼がくわっと赤い口をあける。「いええ、口惜しや、恨めしや」半身は赤と金の小袖、半身は貴族が着る黒い袍(ほう)で見得を切ると、ドロドロが鳴り響く。うーむ、これって永田町のくんずほぐれつの奇怪な芝居にそっくりではないか。本来 ………
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