『蝶々夫人』の誤解を解く岡村喬生

プッチーニ原曲の「奇妙な日本像」を正す日本人オペラ歌手の孤軍奮闘。

2012年7月号 LIFE [特別寄稿]

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イタリア・オペラの定番として世界に親しまれてきたジャコモ・プッチーニの『蝶々夫人』(マダマ・バタフライ)を巡って、そのなかに描かれている日本人や日本文化に対する誤解を正そうと、オペラ歌手の岡村がこの夏に現地イタリアで目指してきた「完全改訂版」の上演が財政難を理由に延期となった。40年前のドイツ公演でこの作品を演じた「奇妙な日本像」に疑問を覚えて、岡村が長年の課題として取り組んできたものだが、巨匠の名作という神話と異文化の壁はなお厚いようだ。いうまでもなく『蝶々夫人』は1903(明治36)年に書かれて以来、プッチーニの代表作として百年以上にわたって世界中で上演されてきたイタリア・オペラを代表する演目である。

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