実らなかった令嬢との恋
2012年1月号 連載 [日記逍遥 第36回]
「小野俊一君の来訪を迎ふ。同君三弟英輔君有馬伯令嬢澄子さんと相思の仲、小野家では貰ひたいこと山々」(昭和6年1月4日)小野英輔と有馬澄子は相思相愛であった。元興銀総裁、故小野英二郎の三男英輔はピアノをこよなく愛する美丈夫、伯爵有馬頼寧の次女澄子は美しさが評判の有馬令嬢の中でも随一といわれ、格好のカップルと思われた。長兄俊一は縁談をなんとかまとめようと、有馬と親交のある吉野作造のもとを訪ねる。「人を介して間接に聞く所に依ると、有馬家では矢張り、同族との婚姻を希望して小野家を顧みぬらしい」たしかに柳川藩士の小野家と久留米藩主の有馬家とでは身分が違いすぎる。だが当時の新人類ともいうべき有馬にして、本当にそうなのか、確かめていただけないか、小野俊一にそう頼まれ、吉野日記も応じる。「有馬伯に手紙を出さうと云ふことにし、文案を示して小野君の同意を得、 ………
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