「テルマエ・ナベツネ」阿諛の湯煙

2012年1月号 連載 [いまここにある毒]

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「小さな石鹸カタカタ鳴った」(かぐや姫『神田川』)の銭湯の風景が遠くなって久しい。人気コミックス『テルマエ・ロマエ』Thermae Romaeは、タイトルが「ローマの湯」を意味するラテン語とあって、思わず手にしたら郷愁の至福に浸ることができた。古代ローマのしがない公衆浴場技師が、現代の日本にタイムスリップして、銭湯や温泉の楽しみ(フルーツ牛乳や温泉卵など)に驚嘆、持ち帰って人気を博すという他愛ないストーリーなのだが、大理石像のような裸のローマ人が、銭湯の洗い場で目を丸くするミスマッチがおかしくて笑いがとまらない。だが、皇帝の浴場設計を命じられるあたりから、権力の翳が差す。孤独な皇帝は、夕べの一風呂の庶民の喜びを堪能できない。ソクラテスの弟子クセノポンが書いた対話編のように、僭主は何もかも思いのままに見えても、謀反が怖くて賢人や義人を抹殺せざるをえな ………

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