文学で覚醒した死刑囚たち

2011年12月号 連載 [硯の海 当世「言の葉」考 第68回]

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東京、京都、函館、名古屋で4人を射殺するという永山則夫の「連続ピストル射殺」事件は、1968年10月から翌年の4月にかけてで、日本がGNP(国民総生産)でアメリカについで2位になったと有頂天になっているころに起きた。私は志望する新聞社の入社試験に落ちてしまい、1年留年を決め込んで、2度目の挑戦をしているころだった。逮捕された永山則夫は幼顔の19歳10カ月の未成年で、世間に大きな衝撃を与えた。私自身は作家寺山修司と同じように「青森県出身で母子家庭」というところに関心を引きつけられた。中学1年まで青森で育ち、そこで父親と死別したという環境は、似ていた。もちろん、漁港に落ちている魚を拾って生活したという彼ほどの極貧生活ではなかったが、あの時代、東北の田舎のノンキャリアの国家公務員の家庭が、それほど豊かであるはずがなかった。逮捕から2年後、獄中で書いた『無知の涙』 ………

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