河上肇日記と鈴木芳子

娘の安否気遣い死の用意

2011年11月号 連載 [日記逍遥 第34回]

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「昨夜、鈴木の身上に関する話を初めて耳にし、今の東洋経済は此際退社の決意をなすべきものと考へる」昭和14年5月5日の河上肇日記は、次女芳子の夫、鈴木重歳の決断を是としている。河上が刑期満了で釈放されて2年後のことであった。翌日、門下生の堀江邑一が訪れると、重歳の就職の世話を頼む。「同(堀江)君は昭和研究会の方を辞し、今度満鉄調査部綜合課の最高責任者の顧問に就任…鈴木のことを篤と頼み入る。何とか都合がつくだらうとの事に一先づ安神する」5月8日、重歳は面接に出掛けるが、翌日唯物論研究会事件で堀江が検挙されてしまう。それでも別の門下生から「堀江君不在にても就職の手続進捗に差支なき」と知らされ、河上は胸をなで下ろしている。やがて大連から電報が届く。「鈴木の南満州鉄道株式会社調査部への入社確定」(7月31日)重歳は採用され、9月18日には単身、上海事務所へと向 ………

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