逮捕と結婚を見守った母
2011年10月号 連載 [日記逍遥 第33回]
昭和8年9月10日、河上肇の次女芳子は、大森ギャング事件の共犯として逮捕された。母親の秀に面会が許されたのは12日後で、その日の河上秀日記にはこう記されている。「すつかり元のお嬢さんになつて、少しやつれ、色が青くなつて居た。顔を見ると一杯涙をため、とう〳〵わたしの膝に折ぷして泣き出した」前年10月、日本共産党の活動資金調達のため、河上秀の実弟大塚有章他3名は大森の川崎第百銀行を襲撃したが、芳子はそのとき、現金を運ぶ車に訪問着姿で同乗し、有章の非常線突破に一役かう。そのまま二人は逃走し、かくして河上秀は、すでに夏から身を隠していた夫を加え、身内3人が地下に潜るというまさに異常な事態に遭遇する。昭和8年1月、まずは弟が、続いて夫が逮捕され、9月には娘の身柄も確保される。ほどなく夫は治安維持法違反で5年の刑が確定、小菅刑務所に移送され、娘は計画を知らなかっ ………
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