野田「柳川鍋」のドジョウ

2011年10月号 連載 [いまここにある毒]

  • はてなブックマークに追加

『雨月物語』に「吉備津(きびつ)の釜」という怪談がある。男が妬婦(とふ)の死霊にとり殺されまいと、魔除け札を貼った家に49日間忌み籠もりをする。最後の一夜が白々と明けたと思って戸を開け放つと、晧々たる月夜だった。「あなや」。黒い髻(もとどり)を残して男は消えた。悪夢がさめてもまだ夢の中という、このオチが怖い。居酒屋のトイレの日めくりにある「相田みつを」が人口にしている。「どじょうがさ、金魚のまねすることねんだよなあ」で庶民をほっとさせた野田佳彦新首相の「柳川鍋」内閣。沸き立つ煮汁に見え隠れするドジョウは、しかし野田の顔ではない。前原出馬で一時は「泡沫」と言われた野田の逆転劇には、なんとしても「復興増税」を実現しようと二人羽織で振り付けてきた黒衣――財務省の執念がちらついている。裏で動いた香川俊介官房長は、竹下登内閣のもとで宰相学を学んだ若き ………

ログイン

オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。

FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。