大震災と短詩型文学

2011年8月号 連載 [硯の海 当世「言の葉」考 第64回]

  • はてなブックマークに追加

東日本大震災直後、多くの文学者たちは沈黙した。あまりの大災害に言葉を失ってしまったかのようにも見えた。しかしながら、しだいに文学者たちは言葉を紡ぎ始めた。とりわけ詩や短歌、俳句といった短詩型文学が怒りや悲しみ、そして屍を乗り越えようという決意を表し始めた。俳人の長谷川櫂は大地震の起きた2011年3月11日から12日間に短歌を詠んだ。それが『震災歌集』となって出版(中央公論新社)された。俳人がなぜ、短歌なのか。長谷川は「はじめに」でこう書く。「その夜からである。荒々しいリズムで短歌が次々と湧きあがってきたのは。私は俳人だが、なぜ俳句ではなく短歌だったのか、理由はまだよくわからない。『やむにやまれぬ思い』というしかない」*歌集の中で私がとくに「!」と感じた5首を挙げる。 かかるときかかる首相をいただきて かかる目に遭ふ日本の不幸 原発をかかる人らに任せ ………

ログイン

オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。

FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。