自分のクビまで「舌先三寸」

2011年7月号 連載 [いまここにある毒]

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神妙な顔で退陣を口にして、永田町ばかりか万人を欺いた菅首相の舌先三寸。政治家の言は遊女の操と同じ、をみごとに証明する「死んだふり」だった。詰めの甘い前首相は「ペテン師」とホゾを噛んだが、二人とも正真のウソつきなのだから空しい。その代償は高くついた。俳諧師の西鶴なら「主だふ(倒)し、我身知らずのなんぴんなり」と書くだろう。難(損)を平(なら)すという米相場の隠語をさりげなく遊里の島原に応用した語法で、客もつかぬのに見栄を張る太夫は、抱え主泣かせの身のほど知らず、「難平(ナンピン)買い」のようなものだという意味である。株でもギャンブルでも、買った目が下がったら、どんどん買い増して、買いの平均コストを下げていく手口。急落する東電株を買うようなものだ。相場が反転すれば大儲けできるが、流れに逆らうから、よほどの資力がないと大火傷する。西鶴は上客を ………

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