高見順日記と鎌倉文庫

「文士が版元自営」の限界

2011年7月号 連載 [日記逍遥 第30回]

  • はてなブックマークに追加

「発案者は久米、川端。駅前に家を借り、鎌倉文士の蔵書を蒐めて貸本をやろうというのだ。当局との折衝、貸家の交渉は久米さんが当り、本集めその他の雑務は私がひきうけようといった」(昭和20年4月6日)貸本屋「鎌倉文庫」はこうして、久米正雄、川端康成、高見順、中山義秀を世話役とし、里見弴、大佛次郎、小林秀雄、小島政二郎、永井龍男、林房雄、真杉静枝、吉屋信子などが加わり、動き始める。出版社は休業状態で、鎌倉文士の生活は苦しく、人気作家高見順でさえ、「家に金はなく、稼ごうにも、早晩原稿生活はなり立たなくなる。どこかへ勤めて稼がなくてはならない」と日記に記すほど追い込まれていた。店探しは難航し、4月25日になってようやく八幡通りの鈴や玩具店を借り受ける。ただちに横山隆一と清水崑が店頭装飾を施し、久米正雄が会員券を書き、高見順が運び込まれた本を調べ、保証金を ………

ログイン

オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。

FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。