偶成の詩人 高橋元吉

2011年6月号 連載 [硯の海 当世「言の葉」考 第62回]

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高橋元吉(1893~1965)という詩人がいる。出身地の群馬県前橋市以外でこの詩人について知っている人は珍しいらしい。過日、テレビでこの人の詩を紹介したら、それを見た人が昭和6年発行の高橋元吉の『詩集耶律』を送ってくださった。奥付に「限定三百部之内第五六号冊」と記してある。「五六」だけが朱色だ。内表紙には元吉が描いたざくろの絵が載っている。手元に届いてからおよそ1カ月、毎日、この詩集を手にしていた。読むというよりも手で触っていたくなるような素敵な本である。「序言」で元吉はこう書く。「詩魂わが胸裡に自生せり。山野の草木と異るなし。風来れば鳴る而已(のみ)。また言ふべきことあらず」元吉は「偶成の詩人」といわれた。作意を感じさせない、いつの間にかできていた、という詩だが、本人は自分が創るものを「詩」だと認識していたかどうか。私が元吉の詩に出会ったのはい ………

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