かくも痛ましき景観・文化財喪失

「三景の松島」も「天心の六角堂」も消え失せた。見えない敵がもたらした「精神文化の空洞」といかに向き合うか。

2011年5月号 DISASTER

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あまたの生命が失われ、原発事故による放射能汚染という危機が世界を怯えさせる。日本が失いつつあるものの大きさを考えれば、大地震と津波が破壊した「風景」の保全のあり方はまだ、二の次三の次の課題であろう。とはいえそれはこの国のこれからとその先の構想に欠かせない、「日本」という国土に寄せる人々の心象と切実にかかわっている。東日本大震災は「日本三景」の一つ宮城県松島で、島々が津波で地形を変えたうえ、堆積物で風景が一変するなど、東北地方を中心に自然・文化景観に大きな被害をもたらした。文部科学省のまとめで施設の破損などの被害が明らかになったのは、仙台伊達家の菩提寺で知られる瑞巌寺(松島)の庫裏の崩落など、文化財だけでも443件に上る。

被災後の砂浜で「鳴き砂」

北茨城市の太平洋に面した岬に建つ茨城大学五浦美術文化研究所の「六角堂」も、震災に伴う津波で跡形もなく流失してしまった。 ………

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