「クルマと私」の不幸な物語

2010年10月号 連載 [眠れぬ夜のバラード ~うつ病時代の処方箋~]

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私はこれでもアウトドア派であった。命がけで道なき砂漠を走るパリダカールラリーなどにも憧れていた。そんなわけで、街中を走るにはかなり仰々しい四輪駆動車に乗っていたことがある。しかし私は車に乗ると妙にいらいらすることに気がつきだした。そして、かなり過激な言葉を吐きながら呪っている自分に驚くことがあった。たとえば、よろよろ自転車を走らせる老人が寄ってきたりすると「ばかやろう」と、声に出して言ってしまう。この現象は私だけではなさそうで、車を運転すると誰でも幾分攻撃的になる。私を一番いらいらさせるのは信号である。誰も見ていなくても、横切る車がなくても、赤なら止まらねばならない。しかも、その向こうに見える信号が青でも無論止まる。今赤である目前の信号が青になったとき、おそらく向こうの信号はきっと赤になる。どこかおかしい、と思ったのは私だけだろうが、本 ………

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