2010年7月号 連載 [眠れぬ夜のバラード ~うつ病時代の処方箋~]
眠れぬ人々が増えているが、人はなぜ眠るのか? 人は忘れるために眠る、とDNAの構造が螺旋であることを発見したジェイムズ・ワトソン先生はいう。実際、眠っている間に脳は不必要な情報を消す処理をしているのである。情報は増やしぶちまけるより、削除するほうが骨が折れることを、インターネットは証明した。脳においても、情報を消す作業は、眠るという他の作業を停止させた状態でないと、できないほどのエネルギーを必要としている。しかし、昨今、情報はあふれ、人を不安に陥れる情報は数限りなく、忘れると重大な損失や危険が生じるものも混在している。そもそも、どれが不必要かといったことが、にわかにはわからない時代だ。忘れたらとんでもないことになりはしないかと、思い巡らすだけで眠りはすでに妨げられる。人が眠りにくくなっているのは、情報の洪水に対処できなくなりつつあるからで ………
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