昭和天皇が見たパリ大賞
2010年6月号 連載 [日記逍遥 第17回]
5月から6月にかけて世界各地で競馬の大レースが行われる。かつて馬が活兵器と呼ばれていた時代には、馬産はいわば軍需産業であり、競馬は軍事技術の品評会であった。だがそのわりには、海外の大レースを観戦した日記は見当たらない。ゴルフに興じる日記はあっても、競馬を見つめる日記は見つからない。せめて競馬場に行った記述でもないかと探していると、意外な日記に出てくる。「一旦御帰艦、背広に更衣の上午后四時御上陸、競馬に御臨場、二回の競馬観戦、中途にて喫茶、午后六時過ぎ御帰艦」(大正10年4月30日)地中海のジブラルタルでのことで、書き手は東宮武官長・奈良武次陸軍中将、「背広に更衣の上」競馬場に出かけたのは、欧州外遊途上にあった皇太子、のちの昭和天皇である。*奈良武次は、明治元年に栃木県に生まれている。22年に陸軍士官学校砲兵科を、26年には陸軍砲工学校をそれぞれ卒 ………
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