小さな「核の傘」と愚かな外交

2010年5月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第49回]

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「大国が互いにしのぎを削る冷徹な世界にあっては、力を持つ者こそが正義なのである。力を持たない者は自分の存在そのものが悪だと決めつけられないよう振る舞うのが精々のところなのだ」外交に携わる者たちに長く語り継がれてきた箴言である。身も蓋もないほど率直な物言いなのだが、苛烈な国際政治の核心を見事に衝いている。大国同士が、食うか、食われるかの抗争に明け暮れるなか、かのリシュリュー枢機卿がふと漏らした言葉だった。17世紀のフランスで宰相をつとめた彼は、ハプスブルク帝国の風圧にひたすら耐え、祖国の存立を守り抜かねばならなかった。近代外交の祖と謳われたこの巨人は、神に仕えるカトリック僧侶でありながら、同じカトリック教国を冷然と切り捨ててプロテスタント国家と結託し、異教徒たるトルコとも盟約を結んで愧(は)じなかった。一国の外交を担う者は、宗教という名のイ ………

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