ブータンは桃源郷ではない

2010年5月号 連載 [隗より始めよ]

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鳩山政権の一部に最近、日本は経済成長ではなく「国民総幸福量」(GNH)を追求すべきだとして、GNHを国家目標に据えているヒマラヤ山麓の小国ブータンを崇める動きがあると聞く。GNHにすがりたい気持ちはよくわかる。GDP(国内総生産)第2位の座を中国に譲り渡しかけの日本は自信喪失状態。日本人は、これまで憧憬の対象を時代の「気分」に合わせて選んできた。曰く、「東洋のスイス」、「自由の国アメリカ」、そして「哈日族(ハーリーズー)の台湾」。日本人から勝手に片思いされるほうこそ、いい迷惑かもしれない。しかしブータンは桃源郷ではない。国王は農地と農奴を1960年代に解放したが、土地所有制度は依然として不平等だ。都市部では失業も犯罪もある。離婚多発の訴訟社会。家庭内暴力も自殺もある。規制社会でもあり、煙草の輸入販売と公共の場所での喫煙は2004年に国法で禁止された。そして0 ………

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