悲劇の宰相大平正芳の人間力

2010年5月号 連載 [硯の海 当世「言の葉」考 第49回]

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政治ジャーナリストとして40年、もっとも印象に残る政治家は、と聞かれれば、やはり駆け出しのころ担当記者になり、毎日、早朝から深夜まで取材でつきあった元首相大平正芳ということになるだろう。2010年は大平正芳生誕百年である。誕生日の3月12日に、親しかった人たちで大平同窓会のようなパーティーが都内で行われた。この日にあわせて作家の辻井喬著『茜色の空』という伝記が出版された。*大平番記者だったが大物政治家と付き合ったという印象はほとんどない。迷いや弱さを隠そうともせずに息子の前にすべてさらけ出すダメ親父のようなところのある人だった。それでも人間としての深さはかなりのもので、折々に彼が私に吐いた言葉が生の声を伴って、私の耳の奥に残っている。立場はジャーナリストと政治家であり、世代も大きくかけ離れていたが、私にとっては戦友もしくは同志のような存在だった ………

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