「没後400年展」が称える気韻と余白の美。無名の絵師が頂点を極めた軌跡を追う。
2010年3月号 DEEP
絢爛たる障壁画は狩野派に対抗して到達した桃山美術の粋であり、水墨画の余白には画家の孤高な内面の息遣いが聞こえる。長谷川等伯の作品には起伏の多い人生が凝縮されている。没後400年を記念して東京国立博物館平成館で開かれる特別展「長谷川等伯」(2月23日~3月22日)の約80点の作品は、歴史の激動期に絵画を日本の伝統美のなかに自立させた「下克上の絵師」の顔を浮かび上がらせる。日本のルネサンスと呼ばれるように多彩な表現と装飾美が花開いたこの時代、無名の絵師から頂点を極めた稀代の才能の手になる作品の軌跡には多くの謎がひそむ。とりわけ等伯の作品が投げかけるのは、作者がその時代の権力とどのようにかかわったのかという、画面の「余白」の面白さである。能登の染色職人の家で絵の素養を身につけて上洛した等伯は、やがて豊臣秀吉や千利休といった時の権力に近づき画家としての地 ………
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