危機に売れるハルキ・ムラカミ

2009年8月号 連載 [硯の海 当世「言の葉」考 第40回]

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出版不況がささやかれるというのに、村上春樹の長編小説『1Q84』の売れ行きは尋常ではない。発売当日の昼前に大きな書店へ寄ったら、「BOOK1」「2」のうち「2」が1冊残っていただけで、2軒目でやっと手に入れた。2軒目も昼過ぎにのぞいたら完売だった。発売が5月29日で「1」「2」合わせて34日間で100万部に達した。7月1日現在で「1」が106万部、「2」が87万部、合計で193万部だから、記録的な売れ行きであることは間違いない。『海辺のカフカ』のときに、内容を知らずに読みたかったという読者の声があったため、新潮社は今回、内容に関する情報は一切、伏せ、村上春樹の最高傑作が発売になるというアナウンスにとどめたという。そのことがある種の飢餓感をあおったのか、発売初日に4刷が出るという異常事態となった。口コミも書評も何もない状態でこれだけ売れるのは、販売戦略のうまさとあいまって、 ………

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