2009年8月号 連載
日が沈む刹那、山脈の万年雪が紺碧の空に金冠のように輝いた。毎年7月になると思いだす。中国側の山麓でなく、裏のカザフスタン側からふり仰いだ。首都のホテルでは、中央アジア視察に訪れていた小渕恵三自民党外交委員長、その通訳の米原万里さん、筑波大学の秋野豊助教授(気がつけばみな故人)らの一行と一緒になった。香港が中国に返還された1997年のことである。▼旧知の小渕氏には「何しにカザフまで?」と聞かれた。「香港返還時の中国を背中から見る取材。次は新疆ウイグル自治区の出口イリを、中国がウイグル人に返還する番かもしれません」と答えた。天山山脈の東西一帯はかつて東トルキスタンと呼ばれ、突厥(チュルク)族が西遷した地で、習俗も住民も漢族の地でないことは現地を見れば明らか。中国は背中では攻守が逆になる、と。▼ヘソ曲がりの発想かもしれなかったが、20代でシベリア鉄道 ………
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