2009年8月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第40回]
「テオ・エプスタイン」という名前を知っている人はかなりのメジャー・リーグ通だろう。ボストン・レッドソックスのゼネラル・マネージャーに29歳の若さで就任した逸材だ。彼はスカウトたちが勘に頼って選んでくる選手を抱えようとしない。自らの選球眼に信を置いているからだ。世界の野球界に張り巡らしたインテリジェンス・ネットワークを駆使して、独自に掘り出し物を探し当てているのだ。そんな特異な才がヘッジファンドの経営者でもある球団オーナーの眼にとまったのだろう。松坂大輔の豪腕は誰でも知っている。だから獲得に数十億円のコストがかかってしまう。だが岡島秀樹なら日本でもさほどの素材とは認められていなかった。確かに防御率など従来の尺度では、Aクラスの投手とは言えなかった。ところが「エプスタイン指標」を当てはめれば、岡島の高い資質が透けて見えてくる。かくしてボストン ………
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