平壌に「内なるロベット」の匕首

2009年7月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第39回]

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「アメリカ大統領として、あなたは核ミサイルのボタンをほんとうに押す覚悟をお持ちなのか――」ふたりの間を鉛のような沈黙が支配していた。ジョン・F・ケネディ大統領にとって、重苦しい時間が果てしなく続くように感じられた。だが実際はわずか数十秒のことだった。誰をも惹きつけてやまないあの瞳に青白い光がよぎったように見えた。若き指導者は意を決して、眼前の老政客にこう応じたのだった。「わが決断によって祖国アメリカと西側同盟諸国の安全保障を全うできるなら、軍事力の発動を命じるつもりです」アメリカ国民はキューバにソ連製の核ミサイルが持ち込まれている事実をまだ知らされていなかった。ホワイトハウスを密かに抜け出した大統領は「フクロウ」と呼ばれるワシントン政界の重鎮にすがるように助言を求めた。軍部に隠然たる影響力をもつロバート・ロベットだった。このニューヨークの ………

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