自爆テロ攻撃に膝を屈した政府。首都から128キロの渓谷が、アル・カイダなどの「疎開地」になる?
2009年4月号 GLOBAL
パキスタンが分水嶺を越えた。世界第二のイスラム教国であり、イスラム圏で唯一の核保有国だが、イスラム原理主義を信奉する武装勢力の浸透で、じりじりと無秩序のカオスへと滑り落ちていく。北西辺境州スワート渓谷は、隣国アフガニスタンのタリバンと連携するパキスタン系タリバンが大部分を支配しているが、この地域を政府が“割譲”したのだ。2月に合意した和平協定案の内容は、スワート地区にイスラム法の導入を認めるかわりに、地区内の武装闘争を停止するというもの。首都イスラマバードから128キロしか離れていない戦略要地まで事実上タリバンの手に落ちたことで、4月までにアフガニスタンとパキスタンに対する共同戦略を決断しなければならない米国と北大西洋条約機構(NATO)は一段と憂慮を強めている。スワート地区のパキスタン系タリバン勢力を率いるのは、マウラナ・ファズルッラーである。 ………
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