2009年3月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第35回]
キュッ、キュッ、キュッ。粉雪を踏みしだく靴音が近づいてくる。1月7日午後11時過ぎ。寒暖計は零下12度を指している。烈風が吹き荒れる北辺の小さな州ニューハンプシャーでは全米に先駆けて2008年予備選挙の幕が上がりつつあった。カナダ国境に近い山あいの村ハーツロケーション。常の夜なら一帯の人々はとうに深い眠りに就いている。だが29人の村人たちは、午前零時を期して、揃って1票を投じようとしていた。多くのメディアが村人の審判を全米に速報しようと待ち構えている。ここは「アメリカで最初に大統領を選ぶ村」なのである。投票の瞬間を中継する地元ラジオ局のアンカーマンは、村の有権者がいつになく浮き立っているように見えたという。新星オバマに予備選挙で初の勝利をもたらすのは自分たちだという高揚感ゆえだろう。果たしてハーツロケーション村でバラク・オバマ候補は、強敵ヒラリー・ ………
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