臨場感あふれる物語の樹海
2009年3月号 連載 [日記逍遥 第2回]
「史料的宝庫だと思います」研究者にそういわれて、有馬家家政相談人倉富勇三郎の日記を手にしたのは、10年ぐらい前のことだろうか。だがいざ読もうとすると、頭を抱えてしまう。漢字は崩れ、句読点はなく、片仮名は連鎖していたからで、それを見越したかのように、件の研究者からメールが届く。「人間というのは不思議なもので、ともかく眺めていると、読めなかった史料が、ある日突然読めるようになります」その言葉だけを頼りに、電車の中でも酒場でも、四六時中眺めていた。数カ月後、不思議なことに、突然文字が文章となって浮かび上がってくる。やがてなんとか読めるようになり、達成感に満たされるのだが、そんな思いも、倉富日記に出合わなければ知ることはなかったろう。*倉富勇三郎は、久留米藩の藩儒の次男として、嘉永6年に久留米で生まれている。明治12年に司法省法学校速成科を卒業し、 ………
オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。
FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。