2009年1月号 連載
1904年9月、社会学者マックス・ヴェーバーは、大西洋を渡ってアメリカ大陸の土を踏んだ。妻マリアンネの日記には、ヴェーバー夫妻のマンハッタン体験が記されている。馬糞の臭いのたちこめる街路の雑踏、21階建ての摩天楼ホテルの一室の無機質と痰壺、窓から俯瞰した目も眩むような眼下の景色……。この旅のヴェーバーの反応が面白い。▼同行者が糞ミソにアメリカをけなすと怒りだし、ドイツよりましだと弁護する。が、ベルリンの広壮な邸宅に慣れた彼に、アメリカの教授の家は人形の家(!)に見え、「パイプをふかせば濛々とたちこめそうだ」と愚痴った。4カ月かけてシカゴ、セントルイス、ボストンなどを転々とするが、アラバマ州の小さな町タスキーギで、この国の遠い未来を透かし見することができた。▼奴隷だった混血の男が、黒人のために運営している教育機関を訪れたのである。差別を克服するには、 ………
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